10月, 2018年

【882号】SOSの猿 サルが飛び、アクマが笑う。伊坂エンターテインメントここに極まる!

2018-10-28

 

「鬼うれしいー!」「鬼たのしいー!」「鬼ツイてる!!」

「鬼すごーい!」「鬼チャンス!」「鬼売れてる!」など、

新刊の『営業の鬼100則』が好スタートを切ったことで、

気がつくと、「鬼、鬼、鬼・・・」を連呼している今日この頃。

 

そのせいなのか。

不思議な〝鬼現象〟が起こり始めました。

 

実は、おとといの朝、寝起きに鏡を覗いてみると…、

なんと、な、な、なんとですね、

私の頭の上に「角が2本」生えているではありませんか!

そう、まさに、〝〟のように…👹

 

それはもう立派な黒いツノがニョキニョキと、左右に2本。

「ついに鬼が憑りついたのかー!」と驚いた私は、

寝ぼけまなこをこすりながら、顔を鏡に近づけて見れば、

たしかに、頭に角が2本。

 

「そんなバカな!」

さらにもう一度、鏡の中の自分をよくよく覗いてみると。

 

「あっ、なるほど!」

私はひとり、笑ってしまいました。

 

その角の正体とは・・・・・、

ひどい「寝ぐせ」だったのです(笑)

 

なんとも微妙なオチで…、大変失礼しました。

 

さて、新刊『営業の鬼100則』ですが、

おかげさまで、発売スタートから1カ月半、

書店での売れ行きは引き続き絶好調のようで、

なんとなんと、またまた5刷目の「重版」が決定したと、

出版社の編集担当者から吉報が入りました。

http://tsuitel.in/books/index.html

 

本当にもうありがたや、ありがたや。

 

「鬼うれしい!」があふれて止まらない

そんな読書の秋でございます!

 

 

 

以上、前置きはここまでといたしまして、

メインコンテンツに入ります。

 

本号も、お薦め書籍(684冊目)として、

ためになる一節を抜粋し、ご紹介いたします。

 

本日のテーマは、【原因分析】です。

 

お役に立ちましたら幸いです。

それでは、どうぞ!

↓↓↓↓↓↓↓

私の本よりためになる「お薦め書籍」シリーズ No.684

『SOSの猿』

サルが飛び、アクマが笑う。

伊坂エンターテインメントここに極まる!

伊坂幸太郎 著

中公文庫

 

 

 

「プログラムにバグが混入する原因には、大きく二種類があります」

昼休みが終わり、釜飯屋から職場に戻ってきた五十嵐真は会議室にいた。机でプログ

ラマーと向き合い、そう言う。

「あの、早くしてください」女性プログラマーはあからさまに不機嫌だ。腕時計を何度も

確認し、椅子にもまっすぐ腰掛けていない。

都内の、三十五階建てオフィスビルの十階、清潔感が漂うというと聞こえはいいが、実

際には、無機質で無菌の病院のようだった。

会議室には、テーブルがいくつも並び、キャスター付きの間仕切りがあり、いくつもの

打ち合わせが行われている。

女性プログラマーは早く自分の仕事場、端末の前に戻りたくて仕方がない。

何しろ単体試験の期限が迫っている。平日は深夜まで残業し、土日の休日の返上し、恋

人の男性とは電話で喋る時間すらない。髪を切りに行く時間もなければ、日々、化粧を落

とすのもままならないような状態だ。

「原因には大きく二種類があるんです。『うっかり』と『思い込み』です」淡々と説明す

る五十嵐真は、眼鏡をかけ、生真面目な学者風であるから、向かい合うプログラマーは自

分がロボットであるかのような気分になる。どうしてこの忙しい状況の中、悠長に、「バ

グには二種類の原因があります」などと指導されなくてはいけないのか理解に苦しむ。

彼女は、「はあ」としか言えなかった。

「うっかり、とはつまり、不注意でミスをした場合です。1とキーボードを叩くべきとこ

ろを2と叩いてしまっただとか、不等号の向きを誤ってしまっただとか、そういうことを

指します。もっと簡単に言えば、佐藤さんに対して誤って、斉藤さんと声をかけてしまっ

た場合が、うっかりです」

「うっかりミスにしても、苗字を間違えられたら寂しいでしょうね」女性プログラマーは

興味がなさそうに、適当に相槌を打つ。「ねえ、そう思わない? イガグリさん」

「五十嵐です」

「あ、ついうっかり」

五十嵐真はそのような嫌味にはまるで、動じない。納期に追われたプログラマーが、品

質管理の五十嵐真に好意的でないのはいつものことであるし、五十嵐真の融通の利かな

い性格が相手を苛立たせるのもよくあることだった。あとになって彼女が、同僚たちに、

「だからわたしあいつに嫌味を言ってやったわけ」と勇ましく話をし、そのことで満足が

得られるのであれば、それはそれで有益だとさえ思った。

「一方、思い込みによるミスは、『正しい』と担当者が勘違いをして、起きたミスのこと

です。今の例で言えば、佐藤さんのことを、うっかり、斉藤さんと呼んだのではなく、斉

藤という男だと『思い込んで』いたがために、斉藤さん、と呼びかけた場合がそれです。

うっかりミスとは異なります」

「ああ、そうかもしれないですね」女性プログラマーは腕時計をまた確認する。それから

少し脚を揺すり、机の上の紙コップに手を伸ばした。彼女の貧乏ゆすりが次第にひどくな

る。

全身が震動し、頬が震え、皮膚がゴムのように大きく伸びたかと思うと、すっと縮まり、

切れ長の眼をした肌の艶々した顔に変わった。口からは踊るような舌が見える。

さすがに五十嵐真も目を見張った。

女性の顔は激しく、ぶるんぶるんと振れ、またもとの、色気の乏しい顔に戻る。

「でも、それがどうかしたんですか。うっかりミスだろうが、思い込みのミスだろうがわ

たしはバグを出しちゃいました。ごめんなさい。それでいい?」

五十嵐真は能面じみた表情で、首を横に振る。「本当の原因を調べないことには、正し

い対処ができないですから」

 

(中略)

 

「いいですか、もし、その失敗の原因が、担当者の『うっかり』にある場合、どうしてそ

のうっかりミスを誰も注意できなかったのかを調べる必要があります」

「うっかりミスなんて、防ぎようがないじゃない」

「その通りです。うっかりミスは防げません。ですから『うっかりミスには寛大に、規

律違反には厳格に』と、これは基本的な考え方であるべきです。そうしなければ、社会が

うまくいきません。得てして、その逆が多いのですが。とにかく問題はその、うっかりミ

スによる被害を最小限に抑えることです。そして一方で、うっかりミスが起きた原因をさ

らに調べる必要もあります」

「うっかりミスは、うっかりとしか言いようがないでしょ」

「いえ、そうとは言えないのです。人間が不注意になるのは環境の問題も大きいのです。

たとえば、睡眠不足」

女性プログラマーは噴き出した。「それが言い訳になるなら、世のプログラマーはみん

な困りませんよ」

「睡眠不足は、失敗の大きな原因です。眠気は脳の機能を低下させます。たとえば、NA

SAのスペースシャトル墜落も、その後の調査によって、打ち上げ関係者の睡眠不足が要

因の一つとして結論付けられました。睡眠不足による大脳皮質の機能低下は、アルコール

による機能低下と同じなんです。つまり、酔っ払って仕事をしているようなものです」

「じゃあ、もっと睡眠時間を増やせるように、って客先に交渉してよ」

「それも一つの、正しい対処です」五十嵐真は冷静に話をする。「そして、次には、うっ

かりミスがどうしてテストで発見できなかったのかを検証する必要があります」

「テストで?」

「うっかりミスは誰でもやります。問題はそれをチェック段階で見つけることです。一方、

思い込みによる失敗の場合は、対処が異なります」

「思い込みに理由なんてあるわけ?」

「ある人が、佐藤さんを斉藤さんだと思い込んでいたという、先ほどの喩え話の場合、た

とえば、その人の背中には『SATOU』と刺繍がしてあるけれど、どういうわけか、糸が

ほつれ、『SAITOU』と読めたのかもしれない。だとすればそれが思い込みの原因で

す」

「背番号みたいに名前を縫ってたら、それだけで有名人ですよ。むしろ、『佐藤さんって、

ほらあの名前を縫っちゃってる奴ね』って印象深くなりますよ」

「喩え話ですよ」「知ってますよ」

「そうだとすると今度は、思い込みの範囲を調べる必要が出てきます。つまり、佐藤さん

を斉藤さんだと思い込んでいるのはその彼だけなのか。もしくは、他の人間も思い込んで

いるのか。この刺繍が原因であれば、他の人間も思い込んでいる可能性が高いわけですし、

刺繍を見たことのある人間を全員、疑う必要があります」

「そしたら他の人間にも、『つかぬことをお聞きしますが、佐藤さんの名前を斉藤さんだ

と思い込んでいないですか』って確認して回るわけ?」

「その通りです。それが品質管理の仕事です。五十嵐真はうなずく。「つまり、思い込み

が原因でバグが混入したのだとすれば、他にも思い込んでいる人間、思い込んでいる箇所

があるのではないか、と調べるわけです。たとえば、設計書の書き方が紛らわしいことが

思い込みの原因だと分かれば、今度は、その設計書と同様の書き方をしている設計書がな

いかを、調べなくてはいけません」

 

 

 

 

2018年10月28日(日)

 

【編集後記】

 

昨日の土曜日は、大学時代のサークルの同窓会でした。

創設メンバーである大先輩方も含め、1期~9期、総勢数十名が集いました。

(ちなみに、私は7期生)

20年振り、30年振り、なかには40年振りの再会という先輩方もいて、

一次会、二次会、三次会と、なつかしさがあふれて止まらない

そんな一日となりました。

 

つくづく思ったことは、男子も女子も、

見た目は年相応に老け込んだり、丸みを帯びた体型に変化しているものの、

ほとんどの人は、「昔と変わっていない」ということです。

 

性格、話し方、声、表情、くせ、などの特徴は、昔のまんまでした。

なかには、むしろその時代よりも「若返った」と思えるくらい、

風貌がまったく変わってない先輩もいて、ホントに驚きました

 

一次会と二次会の合間には、大学の学園祭も見学でき、

あの時代とはすっかり変わってしまった構内の風景でしたが、

ところどころにあの頃の面影が残っていて、

古きよき昭和の時代へとタイムスリップすることができました。

 

沖縄、広島、福島、長野など、遠方から泊りがけで参加された人たちも多く、

これだけの大規模なOB会は、もうこれが最後になるのではないかと思われます。

 

青春の思い出と共に、再会の感動をしみじみと胸に刻みました。

 

ではここで、サミュエル・ウルマンの詩「青春とは」の一節をご紹介します。

 

青春とは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ。

 

若くあるためには、創造力・強い意志・情熱・勇気が必要であり、

安きに就こうとする心を叱咤する冒険への希求がなければならない。

 

人間は年を重ねた時老いるのではない。

理想をなくした時老いるのである。

 

歳月は人間の皮膚に皺を刻むが、情熱の消失は心に皺を作る。

 

悩みや疑い・不安や恐怖・失望、これらのものこそ若さを消滅させ、

雲ひとつない空のような心をだいなしにしてしまう元凶である。

 

六十歳になろうと十六歳であろうと人間は、

驚きへの憧憬・夜空に輝く星座の煌きにも似た事象や思想に対する敬愛・

何かに挑戦する心・子供のような探究心・人生の喜びと

それに対する興味を変わらず胸に抱くことができる。

 

人間は信念とともに若くあり、疑念とともに老いる。

 

自信とともに若くあり、恐怖とともに老いる。

 

希望ある限り人間は若く、失望とともに老いるのである。

 

 

―――サミュエル・ウルマン

 

 

では、また来週号をお楽しみに!

 

 

本日も最後までお読みいただきまして、

ありがとうございました。

******************************

早川勝

【オフィシャルサイト】http://tsuitel.in

 

最新刊↓『営業の鬼100則』

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Bookサイト  http://tsuitel.in/books/index.html

 

【書籍案内一覧】↓

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【人気シリーズ】↓

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【881号】ひと言で伝えろ できる人は「誰でも」「短く」話している

2018-10-20

 

 

本日10月20日、誕生日を迎えることができました

 

数多くの方からの心温まるお祝いメッセージをいただきまして、

誠にありがとうございますm(__)m

 

おかげさまでこうして、無事に56歳まで歳を重ねることができたのも、

ひとえに、皆さまのご支援ご鞭撻があればこそ、

感謝・感謝・感謝の気持ちでいっぱいでございます。

 

そうして「歳を重ねる」ことと同様に、

新刊の「版も重ねて」いけたらなぁ、と心から願う56回目の誕生日。

まだまだ『営業の鬼100則』の「重版は〝4歳〟」の幼児レベル、

http://tsuitel.in/books/book_list/index.html

目指すは実年齢と同じく、重版「56刷」です!(笑)

 

そんな浮かれたバースデーウィークに、さらなる嬉しいニュースが入りました。

東京駅内の「Book Expressグランスタ東京店」にて、

ビジネス書ランキング『第1位』となったのです!!!

並みいる話題本の中でも、ひときわ目立つトップの売り場に置かれているのですから、

やはりテンションが上がりますよね。

 

その売り場のすぐ一つ下段には、なな、なんとなんと、

文芸書ランキング第1位・東野圭吾の最新刊「沈黙のパレード」が…

第2位が池井戸潤の「下町ロケット」ですからねぇ、

それら有名作品と肩を並べられ、

私早川の舞い上がり具合がどれほどのものなのか、

皆さにもご想像いただけるのではないでしょうか。

 

これからは、自称「ビジネス書業界の東野圭吾」を名乗らせてもらおうかと!

 

次の作品は「ガリレオの鬼100則」というタイトルで書きましょうか(笑)

または「マスカレード鬼ホテル」「ラプラスの鬼魔女」、

さらには「鬼夜行」「天空の鬼」「流星の鬼」「麒麟の鬼」・・・、

なんていうのもいいですね!

 

すいません、調子に乗って暴走しました! m(__)m

 

いや、タイトルはともかく、

ただ今、まじめに「小説」第2弾を書いていますので、乞うご期待!

 

2年前に出した小説・第1弾にご興味のある方はコチラです。

『ツイてない僕を成功に導いた強運の神様』

https://goo.gl/ZAooUn

 

 

あっ、ちなみに、先週号でご紹介した「読者女性」とのエピソードの舞台となった、

その渋谷マークシティーの書店「啓文堂」では、

ビジネス書ランキング『第4位』のコーナーでドドーンと売られているようです。

もしかすると、彼女のお仲間が、こぞって買いに走ってくれたのでしょうか。

 

皆さまの応援、本当にありがとうございます。

心より御礼申し上げます。

 

 

 

以上、前置きはここまでといたしまして、

メインコンテンツに入ります。

 

本号も、お薦め書籍(683冊目)として、

ためになる一節を抜粋し、ご紹介いたします。

 

かつて 「ツイてない僕を成功に導いた強運の神様」

の編集を担当してくれたSさんが、

今年、出版社を移籍してから手掛けた初の作品なのだそうです。

 

本日のテーマは、【伝え方】です。

 

お役に立ちましたら幸いです。

それでは、どうぞ!

↓↓↓↓↓↓↓

私の本よりためになる「お薦め書籍」シリーズ No.683

『ひと言で伝えろ』

できる人は「誰でも」「短く」話している

「世界ふしぎ発見!」の放送作家が教える

言いたいことを確実にわかってもらう説明の技術

石田章洋 著

WAVE出版

 

 

ちなみに東京タワーの名称も、

そうした絶大な信頼を寄せられていた人の「鶴の一声」で決まりました。

 

昭和33(1958)年に完成した東京タワーの名称は公募で選ばれたものですが、

じつは公募で最も多かった名称は「昭和塔」でした。

 

審議会が開かれて、一度は「昭和塔」で決まりかけたのですが、

そのとき、異を唱えた人がいたのです。

それが当時のマルチタレントで、審議会の審査委員長だった徳川無声さんでした。

 

徳川さんが全体の0.25%しか応募のなかった「〝東京タワー〟がいい!」

と言い出して、応募数とは関係なく名前が決まったそうです。

 

徳川無声さんは、いまでも使われている「彼氏」や「恐妻家」といった

流行語を生み出していた人気者でした。

ですから「無声さんが言うなら、それでいい」と周囲が納得して

「東京タワー」に決まったわけです。

 

(中略)

 

仮に、あなたがおでん屋さんだったとして、

カウンターのお客さんから、こう注文されたらどうでしょう。

 

「大根と厚揚げ、しらたき、卵に牛すじとがんもどき、それとウインナー巻きにタコ、

つみれとはんぺん、餅入り巾着にロールキャベツにちくわぶとジャガイモ。

以上、よろしく!」

 

メモでも取らない限り、とてもではありませんが、一度に覚えられません。

情報過多の説明は、このおでんの注文の仕方と同じなのです。

 

突然ですが、ちょっとしたテストをおこなってみましょう。

次にあげる10桁の数字、

あなたは10秒間で記憶することができるでしょうか?

 

0430830213

 

いかがでしょうか?

よほど記憶力のすぐれた人でない限り、

10桁の数字を10秒で覚えるのは難しくないでしょうか。

 

ですが、この10桁の数字を3つのグループに分けて、

語呂合わせして意味づけしてみたらどうでしょう。

 

043(おじさん)

083(おばさん)

0213(おにいさん)

 

ランダムに並んだ10桁の数字を覚えるより、

はるかに記憶しやすくなったはずです。

 

その理由は10あった要素を、意味を持つ3つのかたまりに分けたからです。

 

人間は、一度に処理できる情報の量が決まっています。

じつは、3つから5つくらいの要素までしか、一度に処理できないそうです。

 

ただし、5つも一度に処理できるのは、かなり優秀な人なので、

ハードルを下げて「普通の人は、一度に3つまでしか情報を処理できない」

と考えたほうがいいでしょう。

 

おでんを注文するにしても、「まずは大根と厚揚げ、あとしらたき」と、

3つずつでないと、相手は処理できません。

 

固定電話の番号も10桁の数字ですが、

「03-3×××―5×××」と3つのかたまりに情報を分けることで、

ようやく覚えられるのです。

 

(中略)

 

最も単純に説明を短くする方法は、ムダな言葉を捨てることです。

 

ムダな言葉の代表は「え~」「その~」「まあ~」といった間投詞、

いわゆる言葉のひげです。

「~」がひげのような形なので、そのように呼ばれています。

 

この「~(ひげ)」が多いと、

だらだらとした締まりのない説明になってしまいます。

 

ですから、テレビやラジオのアナウンサーは、

こうした「~(ひげ)」のついたしゃべり方を絶対しないよう、徹底的に指導されます。

 

(中略)

 

以前、落語家の前座さんの稽古を見学させてもらったときのこと。

その前座さんが、あまりに「え~」を連発するので、

稽古をつけている真打(師匠)が

「沈黙が恐いから、え~って言ってしまうんだ。

そういうときは、口にグッと力を入れて黙ったほうがいい」

と教えていました。

 

ひげ言葉を言いそうになったら、黙ってみろというのです。

 

沈黙の間をつくると、お客さんは、次に出てくる言葉に注意を向けてくれる。

さらに沈黙の間ができると、メリハリが出て、

ダラダラとした話にはならないのだそうです。

 

私たちも「え~」「その~」と言ってしまうくらいなら、

勇気を持って沈黙の間をつくってみましょう。

 

その間が、効果的に相手の関心を引きつけるだけでなく、

説明を聞いている相手にとっても、思考を整理する時間になります。

 

(中略)

 

数字が大きすぎてかえってイメージしにくい場合もあります。

たとえば、人類は6000年前から金を採掘してきたが、

その総量は約15万500トンです。

 

これをわかりやすく伝えたい場合は、

「その総量は約15万500トン。オリンピック公式プール約3杯分です」

とフォローすると、一気にイメージしやすくなります。

 

テレビ番組でも、広さを「東京ドーム〇個分」

「テニスコート〇面分」といった表現をよく使います。

これも、視聴者にイメージしてもらうための手法です。

 

数字を効果的に使うお手本は、アップルの創業者スティーブ・ジョブズです。

2005年、30ギガバイトの新型ipodを発売したときもジョブズは

「音楽なら7500曲、写真なら2万5000枚、動画なら75時間分を持って歩ける」

と表現しました。

30ギガバイトと言われてもピンときませんが、これなら誰でもイメージできます。

 

私たちもイメージしにくい数字を説明に使うときは、

ジョブズを見習って、手触り感のあるものに置き換えてみましょう。

 

(中略)

 

たとえ話には、「難しいことをわかりやすく説明できる」効果もあります。

 

例をあげれば「構造改革の成果は、すぐに出るものではない」と主張をしたいときも

「漢方薬のようなものです」とひと言、添えるだけで

「対症療法ではなく抜本改革だから、漢方薬のようにじわじわと効くのか」

とイメージさせることができます。

 

実際に、古今東西の偉人からも「人生」や「富」といった漠然としたものを、

たとえることで、短くわかりやすく表しています。

 

「人生とは自転車のようなものだ。倒れないようにするには走らなければならない」

(アインシュタイン)

「人生とは道路のようなものだ。いちばんの近道は、たいていいちばん悪い道だ」

(フランシス・ベーコン/イギリスの哲学者)

「富は海水に似ている。飲めば飲むほど、のどが渇くのだ。

名声についても同じことが言える」

(アルトゥル・ショーペンハウエル/ドイツの哲学者)

 

このように、たとえ話の代表的な表現方法は、

「××は〇〇のようなものである」といった表現です。

「××」には漠然としている伝えたいことや、専門的すぎて伝わらないことを入れ、

「〇〇」には、それをわかりやすく何かに置き換えた言葉を入れます。

 

このときは、「××の〝本質〟とは何か」、

「××と同じようなもので身近にあるものは何か」と発想を広げ、

最適な言葉を当てはめます。

 

ようするに、伝えたいことの本質を見極め、

それを同じ本質を持つもの、あるいはよく似た本質を持つ別の例を探し出して、

言葉を組み立てればいいのです。

 

 

 

2018年10月20日(土)

 

【編集後記】

 

先週号の編集後記で「下剋上シリーズに期待したい」と書きましたが、

由伸ジャイアンツは、あっという間にカープにスリープされ、終戦しました。

 

そうなればもう、関心は日本シリーズよりも、ストーブリーグです。

原辰徳3次政権の組閣も明らかになってきました。

鹿取GMをはじめとするコーチ陣はほぼ総入れ替えとなり、

村田ヘッド、斎藤投手コーチ、二岡打撃コーチ、川相二軍家督らは退任、

代わりに招聘されたのは、宮本和知、水野雄仁、元木大介ら、

しばらく実戦を離れていたタレントOBたちでした。

現役を引退したばかりの村田修一や杉内俊哉もコーチに就任します。

 

今年まで暗かったベンチが、来年は「華やか」になりそうですね。

いったいそれだけで大丈夫かと、やや心配にもなってきますが、

原監督のこと、何か意図があるのでしょう。

 

私はその中でも、かつて巨人の営業部長と謳われた宮本コーチに期待したいですね。

なぜなら私早川は「巨人の宮本に顔もキャラも似ている」と言われ続けてきたから。

ということで、親近感を覚えております。

 

しつこいようですが、来年こそは、バファローズとジャイアンツの日本シリーズを!

ぜひ、実現させたい。

そのためには、なりふり構わず、広島の「丸選手」をFAで引き抜くしかない

10億円出してでも獲りに行かなくては!

 

来週はドラフト会議もありますし…。

根尾、藤原、吉田輝星ら甲子園のスターは、どのチームへ行くのか、

本当に楽しみですね。

 

文字通り、ストーブリーグが熱く燃えています!

 

 

では、また来週号をお楽しみに!

 

 

本日も最後までお読みいただきまして、

ありがとうございました。

******************************

早川勝

【ホームページ】http://tsuitel.in

 

最新刊↓『営業の鬼100則』

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【880号】キャラがすべて!15秒で惹きつけ、1分でファンにする。肩書きでなく、キャラクター勝負!

2018-10-13

 

先日、夜9時過ぎのこと。

散髪屋の帰り道に、渋谷の啓文堂書店を覗いてみたところ、

私の新刊である『営業の鬼100則』を手に持ったまま、

店の中をぐるぐると歩き回っている女性を見かけました。

 

「おおー、なんという偶然!」

よく書店へは足を運ぶ私ですが、

実際に、一般のお客さまが、自分の本を目の前で購入する場面に出くわすのは、

めったにない珍しいことなのです。

 

私は驚きつつも、なんだか嬉しくなり、

その女性を目で追っていくのですが、なかなかレジに向かってくれません。

 

いつまでもウロウロとビジネス書のコーナーを徘徊し、

何十冊もの本を手に取っては戻し、という立ち読みを繰り返していきます。

 

ただ、その間、『営業の鬼100則』だけは、ずっと持ち歩いていて…、

いったいレジへ向かう気はあるのか、気になって仕方ありません。

 

こうなったらもう、その記念すべき瞬間を見届けるまでは見守ろうと、

本棚の陰に隠れながら女性の後を追い続ける「著者ストーカー」と化した私…(笑)

 

犯人を尾行する敏腕刑事のような気分に浸りながら、

心の中ではコートの襟を立ててカッコよく張り込んでいたつもりでしたが、

周りの人からは「ひょっこりはん」のように見えていたかもしれません(^-^;

 

しばらくして、結局、レジに向かったその女性は、

私の本「だけ」を購入し店を後にしたのでした。

 

そうなればもはや、これだけで「マーケティング」を終わらせるわけにはいきません。

私は出口まで彼女を追いかけ、話しかけてみたのです。

 

「どうしてその本を買おうと思ったんですか?」と。

 

すると彼女は、

「なんとなく直観です!」

と答えてくれました。

 

いろいろと話を聞いてみると、食品関係の会社に勤めている方で、

最近、企画部から営業部へ異動となって「営業デビュー」したばかりらしく、

営業のバイブルとなるような本を探していたのだとか。

 

これも何かのご縁であると、名刺交換をして別れ、

「メルマガにも登録しておきますねー!」と約束したので、

きっとご本人もこの号を読んでくれていることでしょう。

 

彼女の営業成績がどんどんアップしていくことを心から祈っております。

 

 

さてさて、そんな新たな読者ファン急増のおかげをもちまして、

4刷目の重版が決まりました!

 

『営業の鬼100則』が発売されてからまだ1ヶ月足らず、

http://tsuitel.in/books/book_list/index.html

初速、好調な滑り出しから、さらに拍車がかかってきたようです。

 

出版社の編集担当者からの情報によれば、

駅構内の書店さんなどでよく売れているようです。

(移動中の営業の皆さんが購入してくれているのでしょうか)

また、大手書店の売り場担当者さんからは、

「(他出版社の本も含めて)営業本のジャンルでは超久々の大ヒットですよー!

という声をいただいているようで…、

ホントに嬉しさ大爆発です。

 

この休日は、さらなる拡販を目指して、

恥ずかしながらミニ色紙」へ〝直筆〟でPOPを書きました

 

十数枚それぞれに違う「ひと言」を添えていますので、

書店で見かけることがありましたら、

記念に売り場の写メなどを送ってくださいませ。

 

お待ちしています。

 

 

 

以上、前置きはここまでといたしまして、

メインコンテンツに入ります。

 

本号も、お薦め書籍(682冊目)として、

ためになる一節を抜粋し、ご紹介いたします。

 

本日のテーマは、【自己紹介ストーリー】です。

 

お役に立ちましたら幸いです。

それでは、どうぞ!

↓↓↓↓↓↓↓

私の本よりためになる「お薦め書籍」シリーズ No.682

『キャラがすべて!』

メディアを使いこなして、自分自身を売り続ける方法

15秒で惹きつけ、1分でファンにする。

肩書きでなく、でキャラクター勝負!

「1億総キャラクター時代」を生き抜くための個人ブランド構築戦略

大内優 著

きずな出版

 

 

 

プロフィールというと、だいたいホームページとか、

SNSのトップページに掲載してあるものを、皆さん想像すると思います。

あるいは本であれば、この本のカバーのそで部分に掲載してあるような、

著者紹介が代表的なものでしょう。

 

ただ、いちばんの基本は「口頭で話せるもの」なのです。

「あなたは何者なのか、説明してください」と言われ、その場でさっと説明できる。

それくらいキャラが自分のなかで明確になっていないと、

他人が伝えてくれることなどありません。

 

そのうえで、やはり「長い説明」では、誰もそれを伝えてはくれないのです。

前項の「起承転結」で、私が「15秒ルール」にこだわっているのも、そのため。

これより長いと、人は飽きてしまいますし、

短すぎても、人の印象にはあまり残りません。

 

じつはテレビ放送も、この「15秒」を基準につくられています。

たとえばニュース番組では、まず普通のニュースがあって、

アナウンサーの画面が入って、そこから本題のVTRに入る。

このときアナウンサーの顔が映っているのは、だいたい15秒です。

ワンショットの絵で20秒とか30秒というのは、かなり飽きられます。

チャンネルを変えられてしまうから、これは避けたい。

かといってアナウンサー画面が入らないと収まりが悪いから、

なんとか15秒でひとつのコメントを加えてもらうわけです。

テレビを観たとき、注意深く時間を測ってみるといいでしょう。

 

ちなみにCMも、ほとんどは15秒でつくられています。

つまり、興味のない相手でも、15秒あれば、話を聞いてくれる。

相手に「もっと話を聞いてもらいたい」と考えるなら、

まずは15秒の話で、相手の注意を引く必要があります。

 

そこで「私は〇〇の△△を解決する専門家です」という、

かなり絞り込んだ「起」をつくっているのは、

まさに15秒で自分の特徴をうったえるためなのです。

 

起承転結の「起」の15秒をクリアすれば、「承」の15秒に進める。

「承」の15秒に耐えれば、「転」の15秒。

それをクリアすれば「結」によって、聞いた人を動かすことができる……

と、考えていただければいいと思います。

 

この15秒のコメントを、文字にするとだいたい60文字。

原稿用紙でいえば3行です。

これも自己紹介と同じで、どんな人でも、読んでくれるのは60文字までということ。

 

実際、テレビ局で多くのプレスリリースに目を通しましたが、

要約の60文字を読んで、興味がわかなければ、

そのままボツにするのがほとんどでした。

 

私に限らず、プレスリリースを取捨選択する人間は、

おおむねそれくらいの基準でしょう。

書籍や雑誌をつくっている編集者も、この点は同じだと思います。

 

ですから、あらゆるプロフィールのキャッチも、

まずは60文字を基準にして考えなければいけません。

長ったらしい文章を書いても、ほとんど読まれないのだから仕方ないのです。

 

けれども、60文字で自分をすべて説明しようとしても、それはかなり難しいこと。

だから「起承転結」で、それぞれ60文字ずつ、興味をそそっていく構成が

いちばん望ましい形になるのです。

 

 

 

2018年10月13日(土)

 

【編集後記】

 

クライマックスシリーズのファーストステージが開幕しましたね。

セ・リーグは巨人VSヤクルト、パ・リーグは日本ハムVSソフトバンク

今年は3位チームが勝ち抜く「下剋上シリーズ」になってほしいと思っています。

 

それで「日本一」といえるのかと、CSへの異論もあるようですが、

私はペナントレースとポストシーズンは、まったく「別腹」だと解釈しています。

それはそれ、これはこれ、と思って熱戦を楽しんだほうが、お得感があります。

 

今年はリーグ優勝を果たした広島と西武の対決ではなく、

巨人と日本ハムの日本シリーズとなれば、「3位対決」は史上初。

大エース菅野と大型新人清宮との対決を、

日本シリーズの大舞台で見てみたいものです。

 

そして、辞任が決まった由伸監督最後のユニフォーム姿を目に焼き付けておきます。

 

そういえば、阪神の金本監督も辞任(解任?)に追い込まれましたね。

昨年オフに3年契約を結び直した金本監督続投は既定路線であったはずでしたが、

「巨人の由伸監督は3位で辞任なのに、金本監督は最下位でも辞めないのか!」

という厳しい世論と阪神ファンの非難に屈し、急転直下の引責辞任となりました。

 

いやー、勝負の世界は厳しいですねぇ。

いつの時代のもトップがクビを差し出さなければ事態は収まりません。

 

連続Bクラスのバファローズ福良監督も辞任しました。

新監督には西村ヘッドコーチが昇格

かつてのロッテ時代に「下剋上日本一」に輝いた監督です。

であれば、来シーズンは「3位」くらいには滑り込めるでしょうか。

 

巨人の新監督には、2度の3連覇を含む7度のリーグ優勝と3度の日本一を誇る、

偉大なる名将・原辰徳監督が復帰、3度目の就任となりました。

これで監督としての通算勝利数が1000勝を超えることは確実で、

巨人軍のレジェンド「川上監督」と「長嶋監督」の通算勝利数を抜き、

原監督が球団史上歴代1位となります。

 

その大記録に「優勝」が花を添えてくれることでしょう。

 

来年こそ、ジャイアンツ対バファローズの日本シリーズが実現することを、

心から願っています。

 

 

 

では、また来週号をお楽しみに!

 

 

本日も最後までお読みいただきまして、

ありがとうございました。

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早川勝

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【879号】AIとBIはいかに人間を変えるのか 人類史上初、我々はついに「労働」から解放される――。

2018-10-07

 

 

このたび、『営業の鬼100則』の発売を記念いたしまして、

早川勝の「オフィシャルサイト」をリニューアルオープンしました!

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色鮮やかに蘇りましたので、ぜひ、ご覧ください。

過去のメルマガ投稿なども10年前まで遡って楽しめますよ。

 

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Bookサイト(トップページ)もリニューアルしています。

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まずは、お知らせまで。

これからもよろしくお願いします(^.^)/~~📚

 

 

 

以上、前置きはここまでといたしまして、

メインコンテンツに入ります。

 

本号も、お薦め書籍(681冊目)として、

ためになる一節を抜粋し、ご紹介いたします。

 

本日のテーマは、【人工知能とベーシック・インカム】です。

 

お役に立ちましたら幸いです。

それでは、どうぞ!

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私の本よりためになる「お薦め書籍」シリーズ No.681

『AIとBIはいかに人間を変えるのか』

人類史上初、我々はついに

「労働」から解放される――。

この歴史的大転換をどう生きるか!

AI(人工知能)・BI(ベーシック・インカム)論の決定版!

すべての生産活動はAIが行い、

生きていくためのお金はBIで賄われる

働く必要がない世界は ユートピアか、深い苦悩の始まりか――。

波頭亮 著

幻冬舎

 

 

超富裕層の下の富裕層(資産1億円以上)は、

日本全体での経済成長が事実上止まってしまっているこの20年の間にも

年々増加してきている。

先にも述べたように、超富裕層と富裕層を合わせた世帯は、

2005年87万世帯であったのに対して、2015年では122万世帯と、

10年間で4割以上も増加しているのだ。

そして国民の人口における資産1億円以上を保有する富裕層の割合は1.9%と、

ドイツ、アメリカの1.4%を抜いて主要国の中では世界1位である。

この指標で見るならば、

「日本は世界で一番お金持ちの割合が多い国」ということになる。

 

その一方で、日々の生活に所得を全て費やしてしまい、

資産を全く持てない貯蓄ゼロ世帯も増加傾向にある。

貯蓄ゼロ世帯は2005年に1505万世帯であったのに対して

2015年には2366万世帯と、

こちらも10年間で5割以上増えており、これは過去最高である。

 

(中略)

 

つまり、所得の面でも資産の面でも、富める者はさらに富み、

貧しい者はさらに貧しくなるという二極化現象が進行しているのである。

 

(中略)

 

再分配の話をすると「貧困者を救う」ためだけのように受け取られがちであるが、

実は貧富の格差が拡大すればするほど、

貧しい人だけではなく富める人までもが幸福感を失うことが明らかとなっている。

 

経済学者のリチャード・ウィルキンソンと疫学者のケイト・ピケットによって

著された『平等社会』によれば、社会の経済的不平等性が高まるほど、

富める人も気分が塞いだり、疑い深くなったり、

その他の無数の社会的問題を背負いやすくなったりするという。

 

この経済的不平等と社会問題の相関については、

その後も数々の検証がなされ、立証されてきた。

また逆に、広範な福祉体制が整っている国においては、

富める人も貧しい人もより幸せであり、

社会的問題もあまり抱えていないことも示されている。

 

キューバでは教育、医療などの公的サービスは全て無償であり、

一人当たりGDPが約7000ドルという決して豊かとは言えない生活を営んでいても

皆が明るい表情でライフを楽しんでいることからも、このことは理解できるであろう。

 

もちろんこうした幸福感や社会の活力の問題の要因は所得格差だけではないし、

ある程度の不平等が生じてしまうというのは自然なことである。

努力によって人より秀でたいという意欲の発生は人間の必然であり、

その対価として報酬がもたらされることは健全なモチベーションに寄与する。

しかしシャファーの欠乏の心理学で示されたように

健全な格差には健全とみなされる範囲があるのだ。

 

日本をはじめとする先進国では、

格差が〝適切〟な範囲をはるかに上回ってしまっている。

これを適正水準まで戻すための再分配制度は、貧困層だけでなく、

裕福な人まで含めた社会全体の活力を向上させるためにも必要不可欠なのである。

 

(中略)

 

例えば、先にゴールドマン・サックス証券のトレーダー1600人が

AIを導入することによって2人で済むようになったという例を紹介したが、

この場合では300倍の生産性向上が実現したことになる。

 

しかしそうした作業労働型のタスクの代替は、

AIが担うであろう仕事のごく一部に過ぎないと考えられる。

AIが担ってくれるであろう知的タスクは、

そうした定着化が可能な作業労働にとどまらない。

アルファ碁が見せつけたように、人間以上の頭の良さは、

敗れた囲碁の世界チャンピオンであるイ・セドル氏の何倍の生産性に匹敵するのかは

定量的には算定・計画できないのである。

 

では、AIがもたらしてくれる価値や豊かさはどのように推量すればよいのか。

かつてケインズは、将来技術が発達していくことによって

1日3時間労働で済むようになるという託宣を出したが、

AIの導入によって同様の生産性改善が実現するとしても、

現在6時間~9時間の労働時間が2分の1から3分の1になるだけである。

これでは生産性の向上はたった2倍~3倍ということになる。

しかし、ほとんどの知的労働を代替する可能性を持ったAIによって得られる豊かさが、

たったそれだけの範囲に収まらないことは明らかであろう。

 

(中略)

 

AIが経済における生産活動の効率性を高め

社会に多くの富を産出するようになっても、

人々に自由と豊かな生活をもたらすためには

BIが不可欠であると説明した。

つまり、「働かなくても、食って良し」

というBIの基本理念に基づいた再分配策が採用されてこそ、

AIという歴史的技術革新の成果を社会の果実とすることができるのである。

 

しかしよく考えてみれば、「働かなくても、食って良し」という考え方は、

権利と責任をセットで考える民主主義の理念には合っていない感じがする。

むしろ民主主義の最も基本的な規範の一つが「働かざる者、食うべからず」であり、

日本の憲法においても「勤労の義務」が掲げられているほどである。

 

こうした考え方と対比してみれば、

「働かなくても、食って良し」は真逆の考え方だと言えよう。

また貢献と報酬のバーターを図る市場機能を最重視する

資本主義のメカニズムにも合わない。「働かなくても、食って良し」は

貢献と報酬のバーターを文字通り真っ向否定するものである。

 

にもかかわらず、AI化時代は「働かなくても、食って良し」

の理念に基づいたBIに支えられてこそ、人々の豊かな生活が実現する。

 

先ほどは生産と消費、資本と労働という経済の観点からBIの必要性を説明したが、

次に規範や価値観の観点からBIの合理性・必然性を説明してみよう。

まず「働かなくても、食って良し」に対置する規範である

「働かざる者、食うべからず」について、この規範の有効性と成立要件を検討し、

その検討を踏まえてBIの基本理念である「働かなくても、食って良し」が

AI化時代に適合していることを検証する。

 

(中略)

 

それでは前項で示したような変化が進展して、

その先に到達するであろう〝新しいステージ〟において、

人間はどのように働くのか、

そしてどのような生活と人生を営むのかについて考えてみよう。

 

先にも少し触れておいたが、〝新しいステージ〟においては経済自体の重要性は低下し、

生きるための労働や生活の必需を賄うための仕事に就くことは

無くなっているかもしれない。

AIによる圧倒的な生産力の実現と給付水準を拡大した

スーパーBIが導入されることで、

働かなくても良くなる可能性は十分にあると考えられる。

 

ではそうなった時に、人間は働かなくなるのだろうか。

 

私は、そうは考えない。

「働く必要がない」というのは「働くべきではない」という意味とは全く異なる。

 

ただし、〝新しいステージ〟においては「働く」という言葉の意味合いや、

人生における「仕事」の位置づけが、

これまでとは大きく転換することになると考えられる。

仕事の種類について、労働条件やタスクのタイプ、

及び就労の動機や取り組み姿勢によって3つに分ける考え方がある。

労働(labor)、仕事(work)、活動(action)である。

 

労働(labor)は、生きるための糧を得るためにやるもので、

非自発的、受動的な姿勢での取り組みになる。

タスクのタイプも単純作業や肉体労働負荷が大きいものであることが多い。

 

仕事(work)は、自分の特性を活かしたり、

自己成長に繋げたいとする動機を以て、積極的に選択して就くものである。

就業の動機に自己実現や興味・関心の追求といった

金銭的報酬以外の要素も入っていることがポイントである。

また、取り組み姿勢も自発的・能動的である。

タスクのタイプは高度な知識や技術・技能を要するものが多く、

報酬水準も高い場合が多い。

 

活動(action)は、労働を提供している対価(主に金銭的報酬)を得ようとするのではなく、

人や社会との交流を通じて自己実現や社会貢献をしようとするものである。

自発的、能動的に行うものであるが、

対価の獲得を意識していない点が仕事(work)との大きな相違である。

 

この労働、仕事、活動の分類に則して考えると、

〝新しいステージ〟では生きるための対価を得るために

仕方なくやらされる労働(labor)は無くなるだろう。

 

この「仕方なくやらされる労働が無くなる」という点が

AIとBIが導いてくれる〝新しいステージ〟の歴史的、文明論的な意義であり、

最大の特徴である。

 

(中略)

 

生きるための労働が不要になれば、多くの人々は働かなくなるのかというと、

実は人間はそのようにはできていない。

人間は生きるために労働する必要が無くとも、

何らかの仕事や活動を行うものである。

 

 

 

2018年10月7日(日)

 

【編集後記】

 

ちなみに、BIというのは、

国民全員に生活できるだけの現金を無条件で給付する「ベーシック・インカム」

という制度のことです。

2年前にスイスが導入の国民投票を行ったり、

去年からフィンランドが実験を始めたりして、

各メディアで話題になり、広く関心を集めましたよね。

 

私も、この本を読んでいろいろと考えさせられました。

まさに今、我が組織が目指している仕組みと似ているような…。

 

近い将来には、すべての生産活動はAIが行い、

生きていくためのお金はBIで賄われる、

そんな労働する必要がない「理想郷」ができあがっていくのでしょうか。

 

 

では、また来週号をお楽しみに!

 

 

本日も最後までお読みいただきまして、

ありがとうございました。

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早川勝

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