早川勝メール【571号】 ある中間管理職の「悲劇」

2011-06-05

 

私の知っている…ある生命保険会社の支店長(Aさん)の実話です。

その支店では、昨年度末、多くの社員が退職離脱したそうです。
辞めたメンバーの中には、2人の中間管理職、BさんとCさんがいました。
しばらく成績が低迷していたBさん、
このままの状況ではやがて降格に追い込まれることは確実…。
A支店長はなんとかBさんを再生させようと、
涙が出るほど一生懸命に心血注ぎ指導を繰り返してきました。
時にはA支店長のお客様を紹介してあげたり、Bさんのチームに優秀な人材を配属させてあげたり、と、
特別にひいきしてまでもなんとかBさんを引き上げてあげたいとエネルギーを費やしてきたのです。
なぜなら、Bさんは支店の立ち上げから組織作りまでA支店長と苦労を共にしてきた仲であり、
何より、十数年前にBさんをスカウトし新人時代から育ててきたのがA支店長だったのです。ですから思いもひとしおです。

ところが、親の心子知らずとはよく言ったもので、
Bさんは目の前のピンチから逃げ出し、他の外資系生保へ転職することとなります。
甘やかしすぎの過保護戦略が裏目に出ました。
退職したい表向きの理由は、「商品のせい」、「会社のせい」です。
人は追い詰められると自己の「正当化」や「言い訳」をしたくなるのでしょう。

ただ、そういった社員が辞めてしまうことはよくあることです。
私も過去に経験がありますし、皆さんにもご経験がおありなのではないでしょうか。

問題はここからです。
Bさんの退職希望が受理されてから退職するまでの3ヶ月の間に、
Bさんから支店内の営業社員への積極的な引き抜き工作が始まります。
転職先の会社からBさんへ突きつけられた条件だったのかもしれません。
食うか食われるかの厳しいビジネスの世界ですから、
そんなことはどの世界でも日常茶飯事なのかもしれませんが、
その支店内においても、ひそかに、そして巧妙に、水面下で引き抜き工作が進行していきました。
まず、Bさんは管理職仲間のCさんを誘います。
それから、部下の中から特に成績が低迷し精神的にも経済的にも弱っている4名の営業社員に甘い言葉をかけ、引き抜きに成功します。
利用されている営業社員もいろんな意味で可哀相になりますが…。

やがてそんな行動がエスカレートしていけば、彼らを信じきって疑わないA支店長の耳にも噂が入ってくるようになりました。
当然、A支店長はBさんとCさんを部屋に呼び、真意を確かめます。
「君らが○○生命に転職するために営業社員たちを引き抜こうと誘っている、
という噂が広がっているが、それは本当なのか」と。
すると、彼らはこう答えます。
「まさか!!!それは心外ですよ。そんなことするわけがないでしょう。僕らを見損なわないでください。
転職先は決まっていませんから、それはデマです。引き抜きなんてこれからも絶対にしないとお約束します」
いけしゃあしゃあと、このようなウソをつきます。
A支店長は言いました。
「そうか。それならばいい。でも、もしも、誰か一緒に連れて行きたい社員がいて、彼らもそれを望むなら、そのときは私に正直に言ってほしい。
陰でコソコソ動いたり、ウソをついたりせずに、正々堂々と胸を張って辞めていってほしい」と。
「わかりました」と答えたBさんとCさんでしたが、
実際は心の中で舌を出して笑っていたのか、はたまた、怖くて本当のことを言い出す勇気がなかったのか、
彼らは退職するその日になっても、A支店長に本当のことを言い出すことはありませんでした。
その最終出社日には、A支店長はBさんとCさんをお寿司屋さんに連れて行きビールを酌み交わしながら最後まで彼らを労います。
A支店長は、頭を下げ、
「私の指導が行き届かなかったために、君たちを成功に導けなかった。申し訳ないと思っている。すまない。
私がもう少ししっかりと応援してあげられたら、君たちをこんな離職に追い込むようなことはなかったのに…。本当に申し訳なかった」
さらに、A支店長はこう続けます。
「君たちには、支店の立ち上げから一緒に本当によく頑張ってきてくれた。本当に心から感謝している。
君たちがいなかったら今の○○支店は存在していかっただろう。ありがとう!」
彼らは神妙な面持ちで聴いています。
「ところで、君たちの次の会社は決まったのか?」
と質問すると、
「いいえ、まだ決まっていないんです。何社か面接は受けているのですが、どうしようか迷っていて、
しばらくは無職ですが、ゆっくり考えて決めようと思っています」
と答える2人。
「ご家族も心配しているだろうし、早く決まって落ち着くといいな。頑張って」
とエールを送り、送別の儀は終了しました。
実は、このとき2人の転職先は決まっていたどころか、翌日から次の会社へ出社することになっていたのです。
引き抜いた4名の営業社員とともに…。

さて、この実話を聞いてどう感じますか?

何も知らない間抜けな支店長があわれだと笑いますか?
踏み込んで疑うことのできないバカな男だと。

いいえ、私はそうは思いません。
きっとこれからこの支店の生産性は上がると思います。
むしろ、コソコソと嘘に嘘を塗り重ね、
後ろめたさと罪悪感を抱えたままで逃げて行ったBさんたちの将来が心配です。
これからもずっと自分で自分に「裏切り者」や「卑怯者」のレッテルを張ったまま生きて行くのですから…。
人様に「ここで新しく働くことになりましたー」と、堂々と言えない職場で働くわけですよね。
なぜ、すべての人に祝福され、「その転職いいね」、と言われるような行動が取れないのでしょう。
彼らの潜在意識の中には、誇りもなければ正義もありません。
普通であれば、長年一緒に汗水流して苦労を共にしてきた上司に対してですから…、
「次の職場は○○生命に決まりました。○○君も一緒に連れていきます。ご迷惑もおかけして申し訳ございません。いろいろとお世話になりありがとうございました。」
と、正々堂々と宣言し、正直な挨拶をすべきでしょう。
勇気を持って正直に事の次第を説明し、謝罪すべきことはちゃんと頭を下げるべきです。
自分が正しいことをしているという自信があるなら、堂々と将来のビジョンを訴えられるはずです。

彼らは、肝心なところで、人生を左右する大事な局面から逃げてしまったようです。

自分で自分の自尊心を傷つけ、人としての誇りを失ったのです。
おそらく彼らはまだそのことに気づいていないでしょう。

自尊心を失ってしまった彼らには、本当の自信が持てません。
卑怯な自分が好きになれません。
善良な人とのコミユニケーションがうまく取れなくなります。

悪いことをしてしまった自分を責めて生きていきますから、
自己評価が下がり成果が上がりません。

いつになっても本当の自分自身に自信が持てませんから、
正しい判断に迷い意思決定力が落ちます。

そして、間違った方向へ向かっていきます。
自分の思い通りに。

さて、
A支店長に話を戻しましょう。
彼らが退職してすぐにBさんらの転職先の情報が入ってくるようになります。
まさに真実をA支店長も知ることとなったのです。

それを知ったA支店長は穏やかな顔でこう語りました。
「私はまったく彼らを裏切り者だなんて思っていない。ましてや恨みもない。
彼らには感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
そのことは、彼らに直接、寿司屋で話した通り。正直な気持ちだ。
それなのに、彼らは『自分は裏切り者』だと決めてしまっている。
だから、本当のことが言えないのだろう。
かわいそうに。
彼らの行く末が心配だ。このまま逃げっ放しで、自分の過ちに気づかないままなら、
また失敗を繰り返し、今度はもっと大きな挫折を味わうことにもなりかねない。
B君、C君たちが、いつか謝罪する勇気を持って私に許しを得にやってきてくれることを祈るよ。
いや、正確には私に対してじゃないな。
私ははじめから許しているのだから。

彼らに必要なのは自分で自分を許してあげることだろう」と。

皆さんはどう感じますか?

この先、成功を勝ち取るのは、
どちらの生き方をしていく人だと思いますか? ??

私はどんなに人に騙されても、
自分を騙すことなく正々堂々と生きていきたいと思います。

自尊心を失わずに。

 

と、本日の前置きはこれくらいにして。

新たに「468冊目」のオススメ書籍から抜粋した「なるほど!」という一節をご紹介します。

・・・と、思ったのですが、
前置きが長くなりすぎてしまったようです。
すいません。
今日のところは来週の予告編だけ、ということで勘弁してください。

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抜粋文章はまた来週!!!

 

2011年6月4日(日)

 

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