【908号】信長の原理 何故おれは、裏切られ続けて死にゆくのか。

2019-07-13


 

超ハードスケジュールの2週間だったため、

メルマガ配信は1回スキップさせてもらいました。

毎週楽しみに待っていてくださる方々、すいません。

 

今月に入り、7月入社の新人たちを迎え入れる研修が始まり、

これでいよいよ私たちの新規直販チャネルも300人規模の組織に成長。

さらにこの2週間は、「新任マネジャー」たちへの濃密な研修を実施し、

私はいつものように「熱血講師」を務めました。

他社ではあり得ない、マル秘エグゼクティブ・トレーニング。

まだまだ3か月に渡り「特訓」は続きます。

 

プラス、夜の懇親会や地方出張、様々なアポイント等、

超多忙なその合間を縫い、息抜きに映画を2本鑑賞してきました。

 

1本目は、「パピヨン」。

かつて私が若き日の40数年前に観た脱獄劇「パピヨン」のリメイク版、

当時の作品は、スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンという、

名優2人の「夢の競演」でしたが…。

 

今作では、主演のチャーリー・ハナムの目元や雰囲気が、

かの大スター「スティーブ・マックイーン」にそっくり

カッコよすぎて、気持ちは青春時代へプレイバックしましたよ!

なつかしくもあり、鬼気迫る熱演にしびれました。

 

前作でダスティン・ホフマンが演じたドガ役には、

「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディ・マーキュリー役で大ブレイクした、

あの〝ラミ・マレック〟が見事なハマり役の大好演!

 

超大ヒットしたクイーン映画公開以前の2017年に完成していた作品が、

今ごろになって公開されたところをみると、

おそらく「ボヘミアン・ラプソディ」の大ブームと、

ラミ・マレックのアカデミー賞受賞などが影響していることは間違いないでしょうね。

 

凄惨で残酷な刑務所から脱獄するハラハラドキドキ感も楽しめますが、

まったく違うタイプの2人、対照的なパピヨンとドクが互いを利用しながらも、

やがては深い友情で結ばれていく姿が見どころです。

 

本当の自己を発見する成長の物語ですね。
ぜひ、若い方も、もちろんオールドファンの方も、

劇場へ足を運んでみましょう。

 

 

そして2本目は、大阪の社員・K君オススメの映画、

「ウィーアーリトルゾンビーズ」

 

いやー、こんな映画はじめて観ました

筆舌に尽くしがたいほどの変わった映画です。もう超びっくり!

でも、凄い。これは名作です。

 

いわゆる「ゾンビ映画」ではないのですよ。

火葬場で出会った13歳の4人組は、みんな両親を亡くしたばかり

バス事故で両親とも事故死。

実家の中華店がガス爆発で焼死。

虐待DVの父の借金苦で自殺。

変質者のピアノ教師が両親を殺害。

 

両親が死んで悲しいはずなのに、

これっぽっちも泣けない子どもたち。

 

そう、まるでゾンビみたいに感情がない

 

夢も希望も歩き出す気力もないゾンビたちは、

ゴミ捨て場の片隅でとびきりのバンドを結成する。

その名も「LITTLE ZOMBIES」。

 

うーん、この作品は、上質のミュージカルでもあるのです。

 

またたく間に「LITTLE ZOMBIES」の動画は拡散され、

両親が死んだ少年少女の4人組バンドは社会現象となります。

 

ファーストアルバムのタイトルは「殺したのは誰だ?」

 

全編ブラックユーモアだらけのシニカルな物語なのですが、

この作品は、彼らが人の心を取り戻すために歩んだ冒険の記録であると言えるでしょう。

 

ベルリン国際映画祭やサンダンス映画祭で絶賛されたときには、

審査員が皆、口を揃えて叫んだらしい、

「こんなの初めて」と

 

子どもたちがゾンビなら、スマホばかり見ている大人たちもゾンビなのだと、

この映画は皮肉っています。

(スマホを見ながらふらふら歩くゾンビのような大勢の大人たちも登場)

 

何より、死生観を問い、哲学的な領域にまで踏み込んでいきます。

映画のサブタイトルもシャレていますよね。

 

「生きてるくせに、死んでんじゃねえよ。」

 

ゲームのような現実と空想の世界が、

ゴミ清掃車に乗って、これでもかこれでもと展開される終盤で、

突然、リアルな「出産シーン」が映し出され、

親が子の誕生を喜び、愛情を受けていたことを知るというシーンも印象的でした。

 

映画のラストは、広い草原をそれぞれ別々の方向へと歩き出す4人を、

空中からのカメラが俯瞰し引いていくロングショット。

 

主人公の子どもたちが新たな世界へ自由を求めて旅立つ姿を描きます。

 

でも実は、まだ物語は終わらず、エンドロールのあとにも続きがあって、

冒頭の葬式のシーンに戻り、主人公をクローズアップして締めくくるのです。

まだまだこれからも物語は続いていく、という象徴的なカット。

 

ラストの音楽が「お経」っていう映画は、初めて観ましたよ。

そう、終わりが始まりなのです。

いやはやなんとも、インパクトあり過ぎでしょ。

 

「現実はくだらな過ぎて泣くに値しない」

「僕の人生はクソみたいだ」

「核戦争で全世界が吹っ飛んでしまえばいいのに」

というような世紀末を望む厭世感に騙されてはいけません。

 

なぜなら、決して彼らは死を選ばず、

「希望」を抱いているからこそ、現実社会を皮肉るのです。

 

劇中で子どもたちは、何度もつぶやきます。

「絶望、ダッサ」と。

 

なるほど、絶望はダサいのか。

 

この作品をひと言で表現するならば、

「人生に絶望しない物語」なのです。

 

ぜひ、皆さんもご覧あれ。

 

きっと、「なんなんだ、この映画は!」と叫ぶでしょうね。

 

 

 

以上、前置きはこれくらいにしまして、

メインコンテンツに入ります。

 

本号も、お薦め書籍(705冊目)として、

ためになる一節を抜粋し、ご紹介いたします。

 

本日のテーマは、【リーダーの器】です。

お役に立ちましたら幸いです。

それでは、どうぞ!

↓↓↓↓↓↓↓

私の本よりためになる「お薦め書籍」シリーズ No.705

『信長の原理』

平成最後の直木賞候補作

何故おれは、裏切られ続けて死にゆくのか。

織田信長の苦悩と行動原理を抉り出す、革命的歴史小説!

信長の飽くなき渇望。家臣たちの終わりなき焦燥。

その組織構造の瑕疵が、「本能寺の変」を呼ぶ。

垣根涼介著

角川書店

 

 

末森城家中の者はすべて、最近の勝家が

信勝から徹底して冷遇されていることを知っている。

だから話し合いが白熱しても、勝家が遠慮して発言しなかったのだと、

同情の視線で見られていた節がある。

とはいえ、本来は勝家が信勝付きの一番家老であり、

いざとなれば最も頼れる武将だということも分かっている。

さらには賛成派と反対派の主張がいつまでも平行線を辿り、

みな、いい加減議論に倦み始めていた。

誰かが話の落としどころをうまく見つけてくれるのではないかと期待する空気が、

暗黙裡に広間に満ち満ちていた。

 

さっそくその勝家の発言に飛びついたのが、

先ほどからなかなか進まぬ話し合いに疲れ、やや苛立ち始めていた土田御前だった。

「権六の申すこと、もっともであると思うが、みなはどうじゃ」

そう、場に詰めていた家臣に問いかけた。いや、問いかけというよりは、

既に自分の気持ちを決めた後の念押しのような口調だった。

 

紛糾する議論にやや疲れ始めていた信勝も、その尻馬に乗るようにして言った。

「わしもそうしようかと思う。たとえ兄者にまだ迷いがあったとしても、

懇ろに見舞ってその気にさせ、譲り状さえ書かせてしまえば、あとはこちらのものだ」

と、すっかりその気になっている。

 

さすがにこの母子の意向には、蔵人も黙り込むしかなかった。

ほんのわずかだが、蔵人のことが気の毒になった。

一年前のおれなら。まさしく今の蔵人のように反対していた。

こいつもこいつで、必死に信勝の身を案じて具申しているのだ。

 

が、勝家は既にこの母子を完全に見放していた。

だから、その後はまた無言を貫いた。

秀貞は言っていた。

あのお方では、織田家は持たぬ、と……。

確かにその通りだ。

この軽率さ。自分の大事にもかかわらず、ある種の野放図な無責任さ。

つまり、じっくりと長考する精神の粘りの無さや、長引く話し合いへの耐性の弱さだ。

まったくうんざりする。

 

以前、信長が陣触れを出した合戦――萱津の戦いや村木砦の戦いなど――に、

禅正忠家の筆頭武官として何度か馳せ参じたことがある。

確かに信長は、個人として見れば欠点だらけの若者だ。

短気で、無礼で、時には暴力衝動を抑え切れず、

失態を犯した小者を平気で手打ちにしたりもする。

重臣に対しても、人を人とも思わない。

頭ごなしに物を言うような傲慢な態度もしばしばとる。

 

が、戦の前の軍議となると、これが同一人物かと疑うほどにその態度は一変する。

武官たちの間で相反する戦術について議論が百出しても、

ほとんど口を挟まずに、最後まで我慢強く聞いている。

議論の途中で大将が下手に意見を挟めば、それに無意識に阿ろうとする家臣も出てくる。

話の全体の方向が、万一にも間違っているかも知れない自分の意見に

引き摺られることを、恐れているからだ。

おそらくは無意識だろうが、大将とはどうあるべきかを骨の髄まで分かっている。

粘り強く色々な可能性や方向性を考えられるだけ揃えたうえで、

その中から慎重に決断を下す。

 

一方で、大局的な戦略――その戦自体をやるのかやらないのか、

やるとしたらいつ始めるのかなど――は、誰にも相談せず、

自分の中で長い時間をかけてじっくりと検討する。

それは、大将が己の責任において一人で決断することだからだ。

少なくとも信勝のように重臣からの上申で右往左往することはない。

この点も、分かっている。そんな禅正忠家としての方向性を衆議にはかろうものなら、

たちまち敵対している他家に漏れ、戦う前から相手に防戦の準備をさせてしまう。

だから、一人で思い悩むことになる。

孤独の中で常に武門の重みを背負うことに耐え続ける。

悩み、苛立ち、躊躇しながらも、流動的な状況の中で、

いくつかの選択肢の中のどれが最善なのかを、常に考え抜くことが習慣化している。

 

勝家も、つらつらとこうして考えてみて初めて分かることだが、

だから結果として信長は、いつも憂鬱かつ不機嫌そうな顔をぶら下げているのだ。

その執拗さ、神経の太さ、耐性の強さ。

武門の棟梁としては必須であるこの三つの資質を、信長はすべて併せ持っている。

 

この違いだけでも、信長は信勝よりはるかに優れている。

家臣として恃むに足る。

 

対してやはり信勝には、一門の長たる器量はない――。

 

 

 

令和元年7月13日(土)

 

【編集後記】

 

今回は、柴田勝家が心で語る、

「兄・信長」と「弟・信勝」を対比する場面を抜粋してみましたが、

この本、「信長の原理」、最高に面白いですよ。

 

織田信長が組織における「二・六・二の法則」に悩む葛藤、

悪名高い松永久秀に再び裏切られる失態、

古参の功労者・佐久間信盛を罷免する決断など、

現代のビジネス社会で戦う我々とも共通する場面もあり、

垣根涼介タッチの描写にグイグイ惹き込まれます。

 

終盤は明智光秀の出番が多くて〝光秀の原理〟かと、混乱しそうになりますが、

それはそれで、明智光秀や柴田勝家の視点から織田信長を「知る」こともでき、

いろいろな角度から楽しめる物語です。

 

垣根涼介先生の前作に「光秀の定理」という、これまたメッチャ面白い小説があります。

どちらかというと、その「光秀の定理」の物語も含め、

最近の私は「明智光秀ファン」なのかも。

 

どちらの本も、話の展開に夢中になってしまい、

ページをめくる手が止まらず、一気読みしてしまいました。

 

来年の大河ドラマも光秀が主人公だと聞いて、楽しみで仕方ありません。

そう、「いだてん」がイマイチなだけに…(視聴率も低迷しているそうですね)。

 

きっと来年は「明智光秀ブーム」が来ます

単なる裏切り者の悪いイメージを一新することになるでしょう。

 

皆さんも、予習をしておいたほうがよいのではないでしょうか。

 

 

さて、鬼の織田信長の話に続いて、

「鬼の報告」です。

 

おかげさまで、『リーダーの鬼100則』

http://tsuitel.in/books/index.html

七夕を前にして、4刷目の「重版」が決まりました

ありがとうございます。

 

さらなるヒットを心から願う、七夕の夜でございました。

 

 

それではまた、来週号をお楽しみに!

 

本日も最後までお読みいただきまして、

ありがとうございました。

******************************

早川勝

【オフィシャルサイト】http://tsuitel.in

 

最新シリーズ↓

『リーダーの鬼100則』

https://ux.nu/thClL

『営業の鬼100則』

https://goo.gl/dd1QQF

 

Bookサイト  http://tsuitel.in/books/index.html

 

【書籍案内一覧】↓

http://tsuitel.in/books/book_list/index.html

【人気シリーズ】↓

http://tsuitel.in/books

E-mail:hayakawa@tsuitel.in

ご感想、配信停止はコチラ↑

******************************

comments
Copyright(c) 2010 HAYAKAWA, Masaru All Rights Reserved.