【837号】言葉は現実化する 人生は、たった“ひと言”から動きはじめる

2017-08-12

 

このたびの連休は、新作の執筆がひと段落したこともあり、

ここ数カ月の間、読みたくても読めなかった「小説」を一気に読破しました。

 

まず手にとったのが、又吉直樹の「劇場」

 

遅ればせながら、本日はその感想をお届けします。

 

芥川賞を受賞した大ベストセラー「火花」を世に送り出した

又吉直樹さんの待望の第二作が、その「劇場」です。

 

「火花」だけに〝一発屋〟で終わってしまうのでは?という、

芥川賞受賞から次作品へのプレッシャーも半端なかったと思いますが…。

 

デビュー作の「火花」を超える素晴らしい作品がここに誕生した、

といってよいでしょう。

愚かな青春時代の心の葛藤と孤独を鮮やかに描き切っています。

 

「かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説」

というオシャレなキャッチコピーからすると、

さぞかし素敵な主人公が登場するのかと思いきや…。

 

いやはや、とんでもない。

何しろ主人公の永田というのは、人間のクズのような男で、

どうしようもなく身勝手で甲斐性のないその男にイライラしたりムカムカしたり、

もう腹が立って仕方なかったというのが、

「劇場」の前半を読んだ私の率直な感想でした。

 

しかし、まさにそれこそが「又吉ワールド」のなせるワザ

 

その嫌悪感の正体というのは、

次第に、私たちの中にも存在することに気づかされます。

 

男の嫉妬心ほど、みっともないものはないと思って生きてきた私でしたが、

過去をふり返ってみれば、羞恥のオンパレードではなかったのか。

 

一方で、「だめんず」ばかりを引き寄せてしまう天使のような女子が読めば、

また、別の意味で共感できるのではないでしょうか。

 

そしてラストは、二人の想い出の数々がつまっている沙希の部屋。

「永田」と「沙希」が別れる場面が訪れます。

 

このラストシーンに近づくにしたがって、

今まで明るく振る舞ってきた沙希の切なくも悲しい心の内側が見えてきます。

 

不覚にも、泣きました。

 

決してお涙ちょうだいの表現などないのですが、

自然とこぼれ落ちていく涙・涙・涙。

 

なぜ、作品のタイトルが「劇場」であるのかもラストでわかりました。

 

すごい小説ですね。

研ぎ澄まされた非凡な感性とお笑い芸人特有の表現力。

 

「劇場」は又吉文学の傑作です。 ビバ! 又吉!

 

ではここで、「劇場」の中から、

又吉作品ならではの秀逸な一節をいくつかご紹介いたします。

 

(まずは「書き出し」から)

 

 

まぶたは薄い皮膚でしかないはずなのに、風景が透けて見えたことはまだない。

 

 

依然、僕の肉体は街の喧騒を避けて進んでいるようだったが、

時々、僕は僕の肉体に追いついたりもしたので、

あるいは全ての行動が自分の意志によるものだったのかもしれない。

だが、僕が僕の肉体を追い越すことは一度もなかった。

 

 

棚には殺し屋みたいな名前の酒が並んでいた。

 

 

「なんかいい話だね」

「どこが?」

「全員やさしい」

そうとらえた沙希だけが優しいのだと思った。

 

 

「世界にはベンチを汚す者と信用していたベンチに汚される者とが存在する」

と僕が言うと、「うるさいよ」と顔を空に向けながら沙希は言った。

 

 

金魚のほとんどは餌の与え過ぎで死んでしまうらしい。

 

 

ここではないどこかへ行きたいと願うことと、

ここではない別の場所を自分達で作ろうとすることは似ているが、決定的に違うものだ。

 

 

自分を嫌っている人から与えられたものを食べて生きることほど惨めなことはない。

ましてや、僕の場合は与えられてさえもいなかった。

母から娘に送られたものを横から無理やり奪って食っていたのだ。

 

 

曖昧な返事をして、ドアノブから手をはなしたとき、想像より大きな音が鳴ってしまい、

これが感情表現だと受け取られたら不本意だと思った。

 

 

恥を撒き散らして生きているのだから、みじめでいいのだ。

みじめを標準にして、笑って謝るべきだった。

理屈ではわかっているけれど、それは僕にとって簡単なことではなかった。

 

 

「あとな、ディズニーランドって、ウォルト・ディズニーって人を祀ってる神社やろ?」

沙希は笑いながら、「神社じゃないよ」と言った。

 

 

「だって、手つないだら転んだ時に顔面から血でるやん」

動揺を悟られないための言葉だった。

沙希は少し考えるような表情で僕の目を見た。

「両手をつなぐわけではないんだよ」

「そうなん?」

「両手ともつないだら歩きにくくない?」

「ほんまやな」

「でも、小学校の遠足とかでつないだでしょ?」

小学校の頃のことを思い出してみた。

「おれ遠足の時、教頭先生と一番うしろ歩いてた」

「そういうタイプか」

 

 

家の鍵を開けると、沙希が焚いたお香の匂いがした。部屋に灯りがともる。

僕よりも慌ただしくソファーに腰を降ろした沙希が僕を見上げて、

「ここが一番安全な場所だよ!」

と笑顔で言った。

その言葉はいつまでも僕の耳に残った。

たしかに、あの部屋が一番安全な場所だったのだ。

 

 

僕はリンゴより梨のほうが好きだが、なぜか家族にはリンゴが大好物だと思われていて、

食後に梨が出た時も、僕にはリンゴが出され梨を口にすることができなかった。

家族の期待に応えるために梨には興味がないふりさえもした。

 

 

世間から歪なものを排除するなら、真っ先に消えるのは自分だ。

 

 

日の暮れた街を往く人々は劇場の客席にいた人数よりも遥かに多かったのに、

すべての人間が『まだ死んでないよ』の舞台を讃えているかのような耳障りな声がしていた。

 

 

負けを認めたからといっても、

そのなかったことが引き連れている苦しみなり痛みなりが消滅するわけではなかった。

 

 

「手つないでって言うたら明日も覚えてる?」

「うん? どういうこと?」

「明日、忘れてくれてんねやったら手つなぎたいと思って」

「手をつなぐことを恥ずかしいと思ってる人、永くんだけだよ」

沙希の手はとても温かかった。

 

 

僕がそう言うと沙希は笑いながら、「本当によく生きて来れたよね」と言った。

沙希が笑うと安心する。笑っていないと怒られているような気さえする。

なにかから沙希を守ってやれないことに自分はおびえているのだと思っていたけど、

守られていたのは僕の方だった。

 

 

嫉妬という感情は何のために人間に備わっているのだろう。

なにかしらの自己防衛として機能することがあるのだろうか。

 

 

この汚い感情はなんのためにあるのだ。人生に期待するのはいい加減やめたらどうだ。

自分の行いによってのみ前向きな変化の可能性があるという穏やかさで生きていけないものか。

この嫉妬という機能を外してもらえないだろうか。と考えて、すぐに無理だと思う。

 

 

相手から与えられる一方だと気が滅入るので、

今更ながらこちらからもなにか与えようとするのだが、必ず固辞された。

僕の場合、与えるということは「欲求」であって「優しさ」なんかではないのかもしれない。

 

 

誰かに認められたいという平凡な欲求さえも僕の身の丈にはあっていないのだろうか。

世界のすべてを否定されるなら、すべてを憎むことができる。

それが僕の特技でもあった。沙希の存在のせいで僕は世界のすべてを呪う方法を失った。

 

 

そんなことを繰り返し、まともに沙希と話していない日々が続いたあと、

やはり酔って沙希の家に行きベッドに潜り込むと、

「わたし、お人形さんじゃないよ」

と沙希が目を閉じたままつぶやいた。

それまで沙希の口から聞いたことのないような冷たい声だった。

 

 

「永くん、わたしが他の人のお芝居褒めたりしたら嫌な気持ちになるでしょ?」

「ならんわ」

「なるよ! クリント・イーストウッド褒めても機嫌悪くなったんだよ!」

 

 

「その彼女の優しさに寄りかかって、

その状態を、はなから彼女が望んでたみたいな言い方してんじゃねえよ。

お前の母親を否定するつもりなんて微塵もないよ。ただ誰もが、お前の母親じゃねぇんだよ」

 

 

「人のことなんてほんまは考えられへんやろ?

人のことを考えてる自分のことを考えんねん」

 

 

「ずっと昼間で人間の体だけ夜になるのと

夜になるけど人間の体は昼間のままなんと、どっちがきついんかな?」

「複雑すぎてわかんないよ」

 

 

便所の灯りが一番強い。

 

 

「俺、あの時、不安定でさ、死にかけとったからな。

でも、死にかけてるって感じることは、生きたいって願うことやからな」

 

 

「でもこれだけは言わせて。なんでもかんでも笑い飛ばす必要なんてないから。

しんどいことは、しんどいでええし。最終的に笑えたら良いと思ってるから」

 

 

沙希がどうしても幸福そうには見えなくて、

苦しくて、ただただ沙希の痛みを和らげてあげたかった。

その痛みの根源が僕自身なのだからどうしようもない。

沙希の啜り泣く声がいつまでも狭い部屋に響いていた。

 

 

どこかで犬が吠えている。この犬の鳴き声にはなんの意味もないけれど

演劇において意味のない犬の鳴き声というものは存在しない。

犬が鳴くからには、そこになにかしらの根拠が必要になる。

意味のない遠吠えは、意味がないという効果を生み出している。

 

 

沙希の声はラジオのなかから聞こえてくるようだった。

 

 

ただの箱と化していく部屋を見ていると、

それまで呼吸していた部屋が死んでいくようにも思えた。

 

 

どんな言葉も僕は受け入れなくてはならない。

すべての罵倒を受け入れたところで、報いには到底届かない。

僕は何かを消すためではなく、背負うために沙希の言葉を聞きたいと思っていた。

 

 

「帰ったら沙希ちゃんが待ってるから、俺は早く家に帰るねん。

誰からの誘いも断ってな。一番会いたい人に会いに行く。

こんな当たり前のことが、なんでできへんかったんやろな」

 

 

以上です↑

 

やはり、天才ですね、又吉直樹さんは!

重くて「深い」物語でした。

 

ちなみに、昨年、私早川も「小説デビュー」しましたが、

「ツイてない僕を成功に導いた強運の神様」 https://goo.gl/rHnquU )

二作目で壁にぶつかって方向性を見失い、わずか半年で断念。

 

次作品は「ビジネス書」へと舞い戻りました。

 

並行してリアルな路線も追求し続けるとしても、

ふたたび「フィクションにも再挑戦したい」

という気持ちにさせてもらいました。

 

いずれは「恋愛小説」も書きたいですね。

 

もちろん、又吉さんのような純文学や文芸作品は無理ですが、

沸々と「やる気」とアイデアが湧いてまいりました。

 

どうかお楽しみに。

 

 

以上、前置きはここまでといたしまして、

今週号のメインコンテンツに入ります。

 

本号も、お薦め書籍(696冊目)の中から、

ためになる一節を抜粋し、ご紹介いたします。

 

本日のテーマは、

【言葉の魔法】

です。

お役に立ちましたら幸いです。

それでは、どうぞ!

↓↓↓↓↓↓↓

私の本よりためになる「お薦め書籍」シリーズ No.696

『言葉は現実化する』 

人生は、たった“ひと言”から動きはじめる 

思考だけでは叶わない。

大切なのは口にすること―――。

永松茂久著

きずな出版

 

 

いまから十数年前、

「この世のどこかにある」と人々が噂する、

〝人生がよくなる魔法の力〟を探し続ける、

とある青年がいました。

 

青年はいろいろなところに勉強に行き、そこで学んだ方法を実験しました。

しかし思ったほどの結果が出ず、一人で悶々としていました。

 

「魔法の力。そんなに都合のいいものなんてこの世にはないかも……。

やっぱりたんなる噂に過ぎないのかな……」

 

そうあきらめかけたとき、青年は、偶然一人の賢人に出会いました。

 

「この人に聞いてダメだったら、あきらめよう」

 

そう思いながら、賢人にいままでの経験を話したあと、青年はたずねました。

 

「あの、人生がうまくいく魔法の力はありますか?」

 

賢人は温かい眼差しで青年の顔をじっと眺め、一呼吸おいてこう言いました。

 

「ある」

 

「本当ですか!」

 

「ああ。魔法の力は存在する」

 

青年は、襲ってきたゾクッと鳥肌が立つような不思議な感覚を抑えながら、

賢人の次の言葉を待ちました。

 

「それはたった一つの簡単なことだよ」

 

「その方法を教えてください。お願いします」

 

賢人はゆっくりとした口調で話しはじめました。

 

「それはね、いい言葉を口にすることだよ」

 

青年はとまどいました。

 

「いい言葉を口にする? そんなことで人生がうまくいくはずがない。

やっぱりそんな都合のいい魔法なんてないんだ」

 

そう思ってがっかりしました。

賢人は青年のその心を汲み取った様子で、続けました。

 

「疑うかもしれないね。信じられないかもしれないね。

しかし言葉こそが魔法そのものだよ」

 

「言葉が魔法……」

 

「そう、いいかい青年よ。人は言葉を使い、言葉で心のやり取りをする。

しかし、あまりにも当たり前に使えるがゆえに、

その言葉の力に気づいている人は少ない。

もし仮に気づいていたとしても、

その言葉の力を意識して使い続けている人はもっと少ない。

そしてまた魔法の力を探してあてのない旅に出る。

だから人は苦しむのだ」

 

もがきながらその旅をずっと続けてきた自分の姿が、

青年の頭によぎりました。

 

賢人はそれまでの柔らかい口調から一変し、

青年の目をしっかりと見て力強く言いました。

 

「青年よ。この法則を覚えておくがいい。

いい言葉がいい未来創るのだ。

人生は君の発した言葉の通りになる」

 

言葉に宿る魔法の力。言葉こそが魔法。

青年は賢人のこの言葉を信じることにしました。

 

青年のまわりの多くの友人は、ひたすら仕事のスキルにこだわっていました。

心を変える方法を探し求める旅を続けている友人もたくさんいました。

ほかの多くの友人は、ひたすらお金を追いかけていました。

 

しかし、青年はたった一人、いい言葉を口にすることに集中しました。

 

実験をはじめて二週間も経たないうちに、

青年の人生に不思議な変化が起こりはじめました。

賢人の言ったように、いいことがたくさん起こりはじめたのです。

 

それと同時に青年のまわりにいる人たちも変わりはじめました。

 

そして何より驚いたことは、

自分が口にしたり書き出したことが現実になっていくことでした。

 

賢人の言葉は真実だったのです。

 

 

 

20世紀最大の発見。

それは「思考は現実化する」という法則だと言われている。

 

この法則は、17世紀に発見され、

ごく一部の人々の間で語り継がれる秘宝の真理とされてきた。

その法則が20世紀で明るみに出たのだ。

 

しかし21世紀になり、人間の研究はさらに進み、

思考よりも人間に大きな影響を与える存在が発見された。

 

それは「言葉」である。

 

 

 

 

2017年8月12日(土)

 

【編集後記】

 

著者累計88万部を突破した永松茂久氏の最新刊をご紹介しました。

 

実は、私の新作の担当者でもある「きずな出版」の小寺編集長が、

編集長就任の第一作目に担当したのがこの「言葉は現実化する」なんだそうです。

 

きずな出版のモットーは、 『言葉は力、言葉はぬくもり、言葉きずな』

 

ということで、応援の意味も込めてシェアさせていただきました。

 

皆さんもぜひ、手に取ってみてくださいませ。

 

 

では、また来週!
本日も最後までお読みいただきまして、

ありがとうございました。

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早川勝

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