早川勝メール【734号】書き出し小説 読むのは一瞬。しかしその余韻は長く、深い。あなたのイマジネーションを容赦なく刺激する

2015-01-12

 

東京の雪谷に城を構える我が家は「大家族」。
一つ屋根の下に、7人で暮らしています。

本日83歳の誕生日を迎える父と81歳の母は、
ともに元気いっぱいで、
絵に描いたような健康寿命を日々まっとうしています。

そして、専業主婦一筋二十年、48歳になった妻と、
21歳になる長女を筆頭に、18歳、14歳の3人娘たちは大の仲良し。
いつも「きゃっきゃ」と楽しそうに、
3人一緒にお風呂で入浴ミーティングしています。

こうして今年も、そんな家族たちと笑顔で年を越せた幸せに、
心の底から感謝している今日この頃でございます。

特に母は、炊事・洗濯から風呂掃除までも
バンバンこなす「スーパーおばあちゃん」。

やや耳が遠いのですが、いまだ頭脳は明晰、
以心伝心の父が「通訳」としてフォローしてくれています。

その父は一日中、政治・経済・スポーツ・芸能などの世界中のニュースを
新聞・テレビから集めているため、
とても83歳とは思えない「情報通」ぶりを発揮しています。

時々繰り出す寒い「ダジャレ」も、
孫たちには人気です。
ボケ切れないところが、ボケ防止につながっているのかもしれません。

一昨晩は、そんな7人家族とともに、
私の姉(53歳)とその娘である姪っ子(29歳)も一緒になり、
身内の新年会&誕生会を開催。
横浜にて中華料理を堪能しました。

父とともに、1月生まれの姪っ子が、ダブル主役。

姪っ子は、弁護士を目指す慶應大の先輩である彼氏との
十年に及ぶ長い春について、
「どーなってるんだっ!」と、
寄ってたかってつつかれながら…、
この日の新年会は「結婚」を一つのテーマに進行していきます。

幼かった私の娘たちも、最近では
「大人の会話」を理解できる年頃となって、
酒宴での“すべらない話”の連続にはツッコみも入り、
場は大いに盛り上がりました。

たくさんの“すべらない話”の中でも
とりわけて孫たちの興味を引いたのは、
独身時代のおじいちゃんが、いかにして
おばあちゃんを「口説いたのか」という裏話。

昭和30年代前半、半世紀以上も前の話です。
映画「三丁目の夕日」の時代背景を想像してもらうといいでしょう。

私の母が若かりし頃は、街でも評判の「美人過ぎる理容師」として
一世を風靡していたらしく(ホントかいっ!)、
父はその床屋さんに足しげく通っていました。

そのとき、父には強力な「恋のライバル」が3人いたのだとか。

金持ち。
秀才。
イケメン。

ちなみに、父は、どれにも該当しない「ただの短足な日本人」です。
普通なら勝ち目はありません。

さて、その“強敵”に勝つために、いったい父はどうしたのか。

どんな戦略で母のハートを射止めたのか。

孫たちは興味津々に耳を傾けています。
(映画「タイタニック」での回想するシーンのように…)

しかし残念ながら、父は「無策」でした。
(デカプリオのような勇敢さも積極性もなく…)

やはり、典型的な昭和一桁生まれの男です。
愚直にも、ただひたすら床屋に通い詰めただけ。

消極策の極みですね…。

毎週のように、父は髪を切りに行くものですから、
当然のごとく、どんどん短髪になっていき、
最後にはもう「頭をまるめる」しかなかったようです(笑)

結局、その「マメな想い」が通じたおかげで、
この世に誕生できた私が、
今こうして「マメに」メルマガを書いているわけです。

いや〜、あぶないところでしたね。

この世に生まれてこられたのも、
まさに、「紙一重」ならぬ、
「髪一重」(笑)

といっても、ただマメに通ったというだけでは、
「結婚」という重大な決断には至らなかったはずです。

最終的に母が結婚を決めた要因とは
いったい何だったのでしょうか。

孫たちのそんな疑問に対し、
母はこう答えました。

元々、母が育った家庭というのは、
厳格といえば聞こえはいいのですが、
いわゆる男尊女卑の思想を持つ母の父(私の祖父)による
独裁的な一家でした。

まあ、明治生まれの無骨な祖父でしたからね。
「ちゃぶ台返しの星一徹」のような日常。
その時代では珍しくはなかったのかもしれません。

それに対して、父の家庭というのは、
女性中心(姉が2人に、妹が3人)の
明るい雰囲気に包まれていました。

母はその温かな光景を目の当たりにして、
強烈なカルチャーショックを受けたといいます。

父の妹たち(私の叔母たち)が冗談を言いながら居間で寝そべっている姿など、
母の実家では「あり得ない」ことだったらしく、
それはもう、びっくりしたそうです。

母が結婚を決めた理由、
それは、父の魅力ではなく、
「家庭」の温かさだったのです。

図らずもデートコースを「家」に選んだ
素朴な父の“無策”が功を奏したのですから、
人生とは、わからないものですね。

しかしながら、結婚後の母は、苦労の連続。
嫁姑、小姑、介護、不況、など、
様々な問題やトラブルが絶えなかったことを考えると、
「苦難のデパート」だった母にとって、
果たしてそのときの「決断」がよかったのかどうか…。

ふと、そんなことを考えながら
何度も鼻から噴き出しそうになった餃子の肉汁を、
紹興酒とともにぐぐっと飲み込んだ…、
そんな一家団欒の夜となりました。

 

 

と、プライベートな前置きはこれくらいにして、
メインコンテンツに入ります。

今週も新たに607冊目の「お薦め書籍」から
ためになる一節を抜粋し、ご紹介いたします。

本日のテーマは、
【余韻とイマジネーション】
です。

一節一節を噛みしめながら
読み込んでください。

どれもシュールで深いですよ。

お役に立ちましたら幸いです。
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メールではじまった恋は
最高裁で幕を閉じた。

 

虹の付け根が、
吉田の家に刺さっている。

 

「魂の話をしよう」
真面目くさった顔でそう言った後、
先生は黒板に塊と書いた。

 

席をつめたがカップルは座ろうとせず、
私はただ横の老婆にすり寄っただけの人間になってしまった。

 

伸ばされた手を掴むか、掴まないか。
一瞬の迷いに彼女は気付いた。
彼女に気付かれた事に僕は気付いた。

 

父の七回忌に、
私そっくりな女が焼香に来た。

 

部屋の蛍光灯を取り換えようとしている父が一瞬、
天使に見えた。

 

「皮が肉を包んでいるという点では、
人間も餃子も同じようなものよね」
モトコはそう言いながら一口頬張った。

 

財布を拾った私の前に、
天使と悪魔と
落とし主が現れた。

 

部長のあだ名を「景気」にしたら、
堂々と悪口が言えるようになった。

 

通過列車の窓が
8㎜フィルムのように僕を映した。

 

草臥れた三浪目の男が自動ドアに映り、
スッと真ん中から割れた。

 

読経のさなか、
坊主は口角に流れ落ちてきた汗を舐め、
昨日届いた地ビールに思いを馳せた。

 

むせかえった父は、
大量に舞い上げた粉薬を残し、
忽然と消えた。

 

もうここには誰もいません、
という声がして、
足音が次第に遠ざかっていった。

 

父さんは妹をかばって死んだ。
母さんは弟をかばって死んだ。
そうして、誰にも愛されなかった私だけが生き延びた。

 

激しい夕立が過ぎると、
風船を配っていたピエロが、
交番の掲示板で見た男に変わっていた。

 

けさ、我が家に牛五十頭が届けられた。
あした妹は異国へ嫁ぐ。

 

何作目かを聞きたかったのだろう妹が、
私に尋ねて来た。
「今やってるの、なん丁目の夕日?」

 

夢もない。希望もない。
家族もない。仕事もない。
ただ一生かけても使い切れないほどの預金が
銀行口座にあるだけだった。

 

そのバラバラ死体を組み合わせると、
どうやっても腕が一本余る。

 

名探偵十人の推理が
きれいに割れた。

 

それはあまりにも完璧な殺人計画で、
誰かに話さずにはいられなかった。

 

母が、十五年の時を経て、
いよいよあの「かたたたき券」を使うらしい。

 

田舎の母からみかんの段ボール箱が下宿に届いた。
中を開けると大量のりんごにサバ缶、
タッパーに入った漬物、
そして緩衝材のつもりなのか
親父の穿いていたブリーフ10枚が丸められていた。

 

母は新しい母とハイタッチを交わして、
去って行った。

 

あの娘が一日署長になるという記事は、
僕に自首を決意させた。

 

小さい頃、
夜明け前にお兄ちゃんと
裏山にカブト虫を採りに行ったら、
大きな木の下で
軍服を着たお爺ちゃんが首を吊って
死んでいたんですよ。
というスタジオトークは、
オンエアでは全てカットになってました。

 

「私の夢はね、このコンビニ丸ごと、
国に持って帰ることよ」
そう言って微笑むジャネットの後ろに、
夕焼けに染まるサバンナが見えたような気がした。

 

不毛な社内会議に出るたびに、
「バケツのどこまで水を入れるか」
でもめた中学のホームルームを思い出す。

 

闇金融の男は
夕焼けの匂いがした。

 

久しぶりに嗅ぎに行こうかと
寄ったそば屋の排気ダクト下には
既に先客がいた。

 

もしもし婆ちゃん?
オレだよ、オレ。まずいことになっちゃった。
車でぶつけちゃって相手に慰謝料が必要なんだ。
今から言う口座に振り込んでもらえる?
オレは死んじゃって何もできないから。

 

もう会えない人にあやまりたいときは、
どうしたらいいんだろう。

 

普段着で来ていたのは私だけだった。

 

 

 

2015年1月12日(祝・月)

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