早川勝メール【715号】本日は、お日柄もよく 大切なあの人へ贈りた い

2014-07-13

 

先日、大阪出張の際に、
元同僚のHさんとお酒を飲む機会があった。

久しぶりの再会に酒宴は大いに盛り上がり、
昔話に花が咲いた。

はじめて耳にする苦労話もあった。

同じ会社に勤めていたからといって
過去をすべて知っているわけではない。

実はHさん、
肝炎を患っていた時期があったらしく、
入退院を繰り返し、様々な治療を試してみたが、
病状が快方に向かうことはなかったと言う。

数年の間、闘病生活は一進一退、
もう治る見込みはないかもしれないと
ドクターから告げられたこともあり、

いっときは、
「死」を覚悟する状況まで
追い込まれたのだとか。

その間、Hさんは仕事にも打ち込んでいたが、
やはりそんな時期は何をやってもうまくいかない。

次から次へと困難が襲い掛かってきた。

しかし、彼は自暴自棄になることなく、
「正しく生きる」ことをあきらめなかった。

生きている限りは、
「世の中に貢献したい」という思いで
いくつものアグレッシブな行動目標を設定したのだ。

その中のひとつが、
「一年間で100人のお年寄りに電車の席をゆずる」
というものであった。

皆さんも経験があると思うが、
お年寄りに席をゆずるタイミングというのは、
本当に難しい。

「年寄り扱いして失礼にあたらないか」
「拒否されたら恥ずかしい」
「周りから偽善者という目で見られないか」
などと、
躊躇しているうちにチャンスを逃してしまう。

ゆずってあげたい優しい気持ちはあるのだが、
どうしよう、どうしよう、
と迷ったあげく、
結局は、
“寝たふり”をしてしまう。

か、または、
「自分だって疲れている」、
「老けて見えるが意外と若い人に違いない」、
「自分以外の誰かがゆずってくれるだろう」、
という“正当化”に落ち着く。

しかし、そんなときは、
罪悪感で心がモヤモヤしてしまうのが人間だ。

思い切って席をゆずってしまえば、
心はスッキリなのに…。

電車でお年寄りに席をゆずる行為には
少なからず「勇気」が必要なのだ。

その小さな勇気の積み重ねを
「100人」というバーに目標設定するなんて、
Hさんの覚悟には驚かされた。

肝炎を患い、決して健康とはいえない彼の
「勇気ある決意」に感服。

Hさんはその“好意”を一つひとつ実行していき、
そしてついに「達成」した。

なんという高潔な行動力なのだろう。

そんな彼に、
やがて、奇跡が訪れる。

彼の病状に合った新薬が開発され、
肝炎は「完治」したのだ。

今では、元気に酒も飲み、
運動や仕事にも汗を流している。

これは単なる偶然だったのだろうか。

いや、そうではないだろう。

私は確信した。

彼自身の生き方が引き寄せた「必然」であると。

じめじめとした梅雨の夜、
出張先の大阪で、
ちょっといい話を聞かせてもらった。

 

 

と、前置きはこれくらいにして。

メインコンテンツに入ります。

本日も、新たに「589冊目」のオススメ書籍から
抜粋した「なるほど!」という一節をご紹介します。

本日のテーマは、
【結婚】
です。

それでは、どうぞ!
お役に立てれば幸いです。
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私の本よりためになる「お薦め書籍」シリーズ No.589
「本日は、お日柄もよく」
大切なあの人へ贈りたい文庫No.1
原田マハ著
徳間文庫
「宴たけなわではございますが、
ここで、もうひとつ祝辞を頂戴いたします」

司会者の声が響いた。

新郎新婦が席に着くタイミングで、
立ち上がったひとがいる。

「新郎の知人で、新郎が大変尊敬されている
『言葉のプロフェッショナル』、久遠久美さまです。
久遠さま、よろしくお願いします」

私は顔を上げて、壇上を見た。

あのひとだ。

マイクの前に立ち、
係りの人にスタンドの高さを調節してもらっている。
マイクに手をやり、黙っている。
メモは持っていない。

ざわざわ、ざわざわ、歓談が続いている。
なかなか話し出さない。
ざわ、ざわ、ざわ。

会場の声が、やがて波が引くように静まった。

まだ話さない。

なんだろ、あのひと?
スピーチするのに、黙りこんじゃってる。

不審な空気が広がったのか、
やがて会場は、水を打ったようにしんと静まり返った。

「あれは、二カ月ほどまえのことだったでしょうか。
ある夜、厚志君が『相談がある』と言って、
私に電話をしてきました」

ぎょっとした。
なんだかすごい始まり方だ。

スピーチというより、告白みたいじゃないか。

私は思わず身を乗り出した。
と、周りを見ると、
お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも身を乗り出している。

妙齢の美人が「相談」ときた。
興味が湧かないはずがない。

おばあちゃんだけが、びしっと背筋を伸ばしたまま、
姿勢を崩していない。
ただし、目はつぶらずに、まっすぐ壇上をみつめている。

「『実は好きな人ができた。
会社でアルバイトをしている子で、まだ二十歳そこそこ。
すごくかわいくて、とってもいい子で、
みんな彼女を狙っている。

だから僕は考えた。
結婚しちゃえばいいって。

それって、早すぎますか?』

厚志君はそう言ってきたのです。

私はすぐさま答えました。

『それのどこが相談なの?
もう決めてるじゃない』って」

どっと会場が沸いた。

お父さんもお母さんも、笑っている。
お兄ちゃんは腕組をして、しょうがねえなあ、という苦笑の顔だ。
おばあちゃんは、ぷっと噴き出して、着物の袖で口もとを押さえた。

笑い声が収まるのを待つように、
一拍おいてから、彼女は続けた。

「世の中に、早ければ早いほどおいしいものが、みっつあります。

一、 ボージョレ・ヌーヴォー(ふむふむ)。

二、『吉原家』の牛丼(爆笑)。

三、結婚(ほお〜)。

今日は、会場にこのみっつが勢ぞろいしていますね。
大変、幸先がいい。

そう思いませんか、皆さん?」

拍手が起こった。
うまい、と私は今度こそ膝を打った。

『吉原家』の社長は、満足そうにうなずいている。
新郎新婦も一緒になって、盛んに拍手している。

「そして、年月を重ねれば重ねるほど、
深いうまみが増してくるものが、みっつあります。

一、愛情(おお〜)。

二、人生(おお〜)。

そして三、結婚です」

もう一度、拍手が起こった。

それが収まるのをまたもや待って、
続ける。

「新郎のご両親は、残念ながら、一昨年、昨年と、
この日を待たずに他界されました。

私は縁あって、新郎の父上、衆議院議員、今川篤郎先生と
懇意にさせていただいておりました」

そう聞いて、急に納得した。
このひとは、今川のおじさんの関係者、だったんだ。
秘書だったのかもしれない。
そういわれると、そんな感じがする。
頭の回転が速く、いかにも切れそうな政策秘書。

「奥様を亡くされた先生に、生前一度だけ、
失礼を承知でうかがったことがあります。

『ご結婚なされて、一番よかったことはなんでしたか?』

先生は、あの独特のシブい声で、
それでもたまらなくお優しい口調でおっしゃいました。

『深いうまみのある人生を、
あいつと一緒に味わえたことかな』

そして、こうもおっしゃいました。

『一度、厚志にも言ってやらなくちゃな。
ときにしょっぱくても苦くても、
人生の最後のほうで、一番甘いのが、結婚なんだ。
お前もさっさと体験してみろ、いいもんだぞ、って』」

会場が、しんとなった。

厚志君は、じっと前を見据えている。
その目が、ほんのりと潤んでいるのがわかる。

「はたしてお父さまが、厚志君にその言葉を伝えたかどうか、
私にはわかりません。

けれどこうして、
いっぱいの愛情と豊かな人生を分かち合うために、
厚志君は恵里さんとともに、ここに座っている。

お父さまに代わって、申し上げたいです。

『どうだ厚志、結婚ってなかなかいいもんだろ?』」

あたたかな笑い声が起こる。
厚志君と恵里ちゃんは、顔を見合わせて笑った。

その拍子に、恵里ちゃんのつややかな頬を、
涙がひとすじ、伝って落ちた。

「お父さまも愛されたフランスの作家、
ジョルジュ・サンドは言いました。
あのショパンを生涯、苦しみながらも愛し続けた
彼女の言葉です。

『愛せよ。
人生において、
よきものはそれだけである』

本日は、お日柄もよく、
心温かな人々に見守られ、
ふたつの人生をひとつに重ねて、
いまからふたりで歩いていってください。

たったひとつの、
よきもののために」

おめでとう。

最後の言葉が、彼女の口から離れた瞬間。
あたたかな、実にあたたかな拍手が、
会場を埋め尽くした。

恵里ちゃんは、白い手袋の指先で涙を拭っている。
厚志君が、その肩をそっと抱いている。

お父さん、お兄ちゃんは、夢中で手を叩いている。
お母さんは、ナプキンで鼻を押さえている。
おばあちゃんは、ていねいに、いつまでも、
静かな拍手を送っている。

私は……私は、
情けないことに、
さっきつけ直したマスカラがまた落ちてしまうほど、
泣いていた。

 

 

2014年7月13日(日)

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早川勝
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